村田 森 × 田村 一 の二人展によせて
2006年7月4日から15日まで
逆進化する白のクオリアを求めて

                     うつわのみせDEN 田口巌水 2006年6月

 


↑村田 森 作


↑村田 森 作


↑田村 一 作


↑田村 一 作


↑村田 森 作


↑田村 一 作
 磁器づくりは、今や
ほんとうの快さを求めて科学技術には逆行しているようだ。

純粋な磁土を追求してきた歴史が、ずっと今日まであったのだが、つい最近になって技術的にはほとんど100パーセントの磁土を作ることも可能になってしまった。

そうなると今度は均一で真っ白な“うつわ”に、もの足りなさを感じるのだ。美人は三日で飽きるというし、塩化ナトリウムより、岩塩の方が旨いと感じるのと同じことなのだろう。自然な不純物の混入(ちょっとそばかすありの健康美人)が人を安心させるのだ。

そういう傾向のなかで現代陶芸家は真っ白な磁器土を前にして四苦八苦している。ほんとうに自然の中で自然素材を見つけ出す方法もあるが、人工的に、科学的に微妙な質感を追求する方法もある。今日多くの磁器作家が、その両方の方法を駆使して、白を求めてなしえなかった前時代の磁器(李朝陶磁器など)を希求しているような気がする。また、陶器では歓迎される形のゆがみも、磁器では許されず、正確なシンメトリーが要求される(官窯至上主義的)傾向もあった。しかし、はやり今日の日本では、そのベクトルは方向を変えている。つまり磁器においても自然なゆがみが歓迎されてきている。

 これらの傾向は、柳宗悦や青山二郎などから熱愛された李朝陶磁器へのオマージュであり、量産品へのアンチテーゼの意味もあり、ここ数十年作家主義のムーブメントになっているのだが、同時に逃げ道にもなっているように感じる。なぜなら、あまりにも安易な作為から産まれた作品に出会うからだ。

 しかし、このお二人は、そんな安易さを感じさせない、真摯な創作をしていると思う。


村田森さんは以前にも企画展に出展していただき、紹介させていただいてますが、特に最近の磁器の仕事には、自由闊達な諧謔の精神に溢れています。作家自身が楽しんで取り組んでいることで、作品が生き生きしています。一皮向けたような感じです。
 村田さんの“うつわ”は形状に独特の緩やかさがあり、一見そんな緩さが目を引きますが、よくよく見えると、ナイーブでビビットな細部が見えてきて、全体をぐんと引き締めています。いわば爪を隠すレオ(ジャングル大帝の白い獅子の子)のような“うつわ”なのです。

 田村一さんは、青磁などにも取り組み始め、精力的に作品の幅を広げていますが、特に彼がすぐれているのは、質感に対する美意識(クオリア)のような気がします。一見凛とした冷徹さをみせるうつわだが、使っていくうちに緊張感のベールが溶けていく。勢いあるしのぎや、ゆったりとしたろくろ目のせいも確かにあるのだが、“うつわ”の持つ独特の質感が、そのスイッチになっているよう。盛られた料理を含むクオリアを大事にしているのだろう。また、ロクロ目としのぎのラインの交錯は、磁器製作の屈強な歴史へのアンチテーゼのようにも思えて潔い。しのぎのない作品に作家の真骨頂が見える気もするが、うつわはいつも十八番である必要はないのだ。その時々の気分や流行に揺らいでいいのだと思う。それは食文化というものが、そういうものだから。

余談だが、
磁器土にしのぎを入れることは、最近の流行のようで、よく見受けるし、今回のお二人もしているが、けっこうな技術のいるものだし、割りの合わない作業だが、これを能くするのは、作家の成長過程で重要な修練になるような気がする。うつわのラインや厚みに繊細なsomethingが加わるように思うのだ。修行僧の読経がロクロなら、写経がしのぎ入れのような・・・

さて
今回、
磁器の清涼感をテーマにしてみたのだが、
(確かに磁器の清涼感はガラスの比でないようにも思うのだが)この二人の人としての清涼感も見逃せないのを言い足しておきます。

ひと時代前の泥くさい陶芸家のイメージからは、かけ離れているのだ。陶芸家であるからには、もちろん土と火と汗にまみれて働くわけだが、この二人はまるで書家や花人のような飄々とした風情を持っているのです。

インドでは、月は灼熱を冷ます力があると信じられているが、まさに月の冷却力をもった“うつわ”を生み出す月読みの巫女!!のような陶芸家二人なのである。
あはっ 言いすぎたかも でもまあ
そんなクールなお二人なのです。

それと最後に

磁器にしろ、陶器にしろ、ガラスにしろ、冷たい料理を盛るときは十分に冷やして使いましょう。

冷蔵庫に入れて冷やすのもいいのですが、
大きな桶に冷水を張って、漬けておくのもおすすめです。水に漬けておいて、最後に少しだけ冷蔵庫で冷やすものいいでしょう。

冷製パスタや、サラダももちろんですが、
熱々のナシゴレンやカレーなんかも、色移りなどしないので、意外と磁器向きです。

是非試してみてください。

はなしは変わって
今回の作家さんのお名前ですが、村田と田村で、シンメトリーで、“森”と“一”の一文字のお名前も相似関係のようで不思議。そんな記号的なインスピレーションから、
店長の発案で
涼×涼のタイトルにしたわけです。

展示会のころには、もう梅雨があけはじめ
暑い日もありましょうが、
冷茶など用意して(お出しできないこともあります)
お待ちしております。どうぞお運びください。

PS.

不思議なことにDENは同じ姓名の方が多いんですよ。
村田森さん、村田紀之さん 田村浜男さん、田村一さん、
西村和さん、西村俊さん

まったく親戚関係もなく地域も違う方々なので、
不思議な連鎖を感じてしまいます。
とはいえ、間違わないでくださいね
あっ私だけか?混乱してるのは?はは は・・・


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